HR領域の開発経験を、事業成長に直結する場で活かす
キャリアの軸は、一貫してHR領域のシステム開発です。新卒で入社したSIerでは、自社パッケージ製品を持つ開発部門に約9年在籍し、勤怠・給与・人事システムの開発に携わってきました。仕様策定から開発、組織マネジメントまで、製品づくりを一貫して担ってきた経験は、現在ラクスで担当している領域とほぼ重なります。
その後、人材サービス企業に転じ、社内システムの改善を担当しました。この3年間は、自ら開発するよりもプロジェクトマネージャーとしてエンジニアをリードする立場です。改善の起案から運用後の効果検証までを担い、事業部門との調整を重ねながらプロジェクトを推進してきました。
前職で開発を担当したシステムは、本業を支える社内向けの位置づけでした。次第に強くなっていったのが、自分たちがつくるプロダクトそのものが事業の成長を左右する環境で、HR領域の経験を活かしたいという思いです。それが転職の軸でした。
そんなときに声をかけてくれたのが、1社目の後輩で、先にラクスに入社していた同僚です。10年近く共に働き、価値観の近さもわかっている彼が、入社から1年ほどで「これまでの経験を活かせるし、楽しくやれている」と勧めてくれたことは、大きな判断材料になりました。9年間向き合ってきたHR領域の知見を、今度は事業の成長に直結するプロダクトで活かせる。そう考え、2023年2月に入社を決めました。
事業との距離の近さが、判断の裁量を生む
事業責任者や企画担当と毎週のように対面で議論し、その場で開発の方針を一緒に決めています。私たちの組織はラクスの中でも階層が少なく、意思決定者に直接働きかけられる近さがあります。この距離の近さとスピードは、他のプロダクトと比べても際立った特徴だと思います。
事業部門から「こうした課題を解決したい」と相談を受けることは、当然あります。ただ、それをそのまま引き受けるわけではありません。開発組織もドメイン知識を持っているので、「実はこういうケースも考えられます」「この要件なら、こうした形のほうがよいのでは」と、機能や要件そのものにアイデアを出しています。事業部門も開発の事情を理解してくれているため、開発案件のスケジュールや進め方は、基本的に開発側の裁量で決めています。
こうした距離の近さがあるからこそ、エンジニアリングマネージャー(以下、EM)にはピープルマネジメントの一部にとどまらない役割が求められます。メンバーの育成、技術的な判断、事業部門との調整は、すべて地続きです。
そのため、技術とドメインの両面の理解が欠かせません。メンバーをマネジメントするには技術への理解が前提になりますし、プロダクトを前に進めるには業務知識が必要です。とりわけ勤怠計算は極めて複雑で、EMが正しく読み解けなければ、開発メンバーの判断を支えられません。事業部門と開発メンバーの双方から情報を集め、その意味を解釈したうえで、それぞれに適切に伝える。情報のハブとして機能することも、EMの重要な役割です。
ドメイン知識の価値を強く実感させてくれるのが、「楽楽勤怠」をほぼゼロから立ち上げたメンバーの存在です。技術力はもちろん、勤怠の制度や業務への理解が群を抜いています。エンタープライズ向けの営業が強い環境で、お客さま先に足を運んで課題を聞き取り、製品に反映してきた人です。個社向けに設計した機能を、どのお客さまでも使える汎用的な機能へと仕立て直してきました。その積み重ねが、現在の幅広い業務要件に対応できる機能の網羅性につながっています。
とはいえ、入社時点でこれだけのドメイン知識を備えている方は多くありません。重要なのは、その必要性を理解し、入社後に着実にキャッチアップしていけることです。
組織としても学習の仕組みを整えています。入社時には「楽楽勤怠」や勤怠・給与業務の理解度を測る学習とテストを用意しています。月1回の開発全体ミーティングには事業部長も参加し、企画担当からお客さまの声が共有されます。また、法改正の動向や競合企業の決算情報を日々共有する、開発組織向けのポータルサイトも運用しています。

あえて分業せず、顧客と向き合い続ける
私たちの組織が大切にしているのは、あえて分業をせず、開発自身が顧客との接点を持ち続けることです。その考え方は、組織の成り立ちにも表れています。
起点は2024年4月の組織統合です。2023年、HOYAから「kinnosuke(キンノスケ)」事業の譲渡を受け、そのメンバーと、もともとラクス側で勤怠管理サービスを担当していたメンバーが、それぞれ5名ずつ合流。リブランディングを経て「楽楽勤怠」として立ち上がり、約10名体制でスタートしました。
開発プロセスも組織文化も異なるチームの統合に加え、統合元のプロダクトの仕様を把握しきれておらず、ドキュメントも十分に整っていない状況。そこから開発を軌道に乗せる必要があり、難易度の高いスタートでした。
その後、「楽楽勤怠」のリブランディングを機に導入企業が増え、給与領域への参入や、ラクスが提供するサービスの共通基盤となる「楽楽従業員ポータル」の立ち上げも始まりました。
組織は現在32名で、今期中に45名規模への拡大を計画しています。開発体制はオフショア開発拠点のラクスベトナムとの連携も含めて拡充を続けています。
この組織づくりの中でも象徴的なのが、お客さまからの問い合わせへの向き合い方です。
エスカレーション対応は、専任チームに切り出さず、開発組織全体で担当しています。
突発的な対応が開発スケジュールに影響することもあり、負荷は決して小さくありません。それでもこの体制を続けているのは、お客さまが私たちの想定と異なる使い方をしているケースが少なくないからです。
システムが実際にどう使われ、どこに課題があるのか。その接点をエンジニア自身が持ち続けなければ、よりよい製品はつくれないと考えています。
プロダクトマネージャーやフロントエンドエンジニアが同じ組織にいることも同じ理由からです。
分業には分業の利点があります。一方で、仕様を決める上流工程と開発、あるいは開発の中でも領域ごとに組織を分けると、部門間にどうしても壁が生じ、開発や意思決定のスピードが落ちてしまいます。事業として早い成長が求められていたからこそ、壁をつくらない一体型の組織を選びました。
提供価値を最小単位に分けて判断し、素早く届ける
「楽楽勤怠」は現在、1週間単位のスプリントで開発を進め、月2回のペースでリリースしています。次に目指しているのは、週1回のリリースです。
重視しているのはリリースの回数ではなく、お客さまに価値が届くまでの時間です。早く届けられれば、それだけ長くお客さまに価値を感じていただけます。とはいえ、1回のリリースですべてを実現しようとすると、要望が積み重なり、機能が肥大化しがちです。そこで開発側からも「本当にここまで必要でしょうか」「価値の核はこの部分なので、まずはここからリリースしませんか」と提案し、お客さまが価値を実感できる最小単位まで分割してから届けています。実際の利用状況や反応を踏まえて次の開発範囲を決めるため、判断の精度も高まります。リリース単位が小さければ、お客さまへの説明を担う営業やカスタマーサクセスの負担も抑えられます。
一方で、何でも早く出せばよいわけではありません。勤怠システムは、お客さま企業の全従業員が日常的に利用するサービスです。大きな機能をリリースすれば、人事担当者のもとに従業員からの問い合わせが集中し、社内マニュアルの改訂も必要になります。そのため、影響の大きい変更は慎重に進め、画面上の変化が少ないものは早めにリリースしています。何を、どこまで、いつ届けるかという判断に、開発側も主体的に関わっています。

まだ完成していない組織を、これから共につくる
組織もプロダクトも、まだ完成の途上にあります。
導入企業の急増に伴い、AWSのインフラコストも比例して増加しています。始業の9時と終業の18時前後にアクセスが集中するため、そのピーク負荷への対応は継続的なテーマです。加えて、技術的負債や複雑な勤怠計算に起因するコードの難しさもあります。裏を返せば、まだ磨き込む余地が大きく残っている領域でもあります。
一方で、新しいプロダクトでは異なる技術的挑戦も進んでいます。
給与計算のオプション機能は「楽楽勤怠」と密接に連携するため、同じ基盤・同じインフラ上で開発しています。そのうえで給与領域についてはアーキテクチャを刷新し、ドメイン駆動設計を実践しやすい構成を採用しました。
「楽楽従業員ポータル」は、ラクス全体の共通基盤となるサービスです。そのため、インフラから技術スタックまで独立したシステムとして設計し、他のラクス製品との親和性が高いJava・Kotlinで開発しています。
AIについても、製品への組み込みと開発プロセスでの活用の両面で取り組みを始めています。利用ツールを限定せず検証できる環境を活かし、個人の工夫を組織全体の生産性向上につなげていくことに挑戦しています。
今後は、HRソリューション事業本部の成長を、プロダクトの側から牽引する組織でありたいと考えています。
「楽楽勤怠」はさらに拡張を進め、給与計算も継続的に機能を強化していきます。「楽楽従業員ポータル」では、他サービスとの連携やAIエージェントも含め、ポータル上で業務が完結する姿を構想しています。事業としてHR領域をさらに広げていくのであれば、新規プロダクトの立ち上げも含めて、この組織の中ですべて担える体制をつくりたいと考えています。
ドメイン知識を深めながら事業をつくっていきたい人、お客さまとプロダクトに理解と愛情を持ち、よりよくする方法を考え続けられる人。事業部門とも開発メンバーとも信頼関係を築き、納得感を持って物事を前に進めていける人。そうした方にとっては、面白い環境だと思います。
組織はまだ拡大の途上にあり、未完成です。だからこそ、事業と技術の両方に踏み込みながら、仕組みやプロセスをゼロからつくっていく余地が大きく残っています。これから加わる方と一緒に、その手触りを味わいながら組織をつくっていきたいと考えています。
※所属・役職はインタビュー時点(2026年9月)のものです。