借方と貸方とは?意味や覚え方、仕訳の基本的な考え方を解説
「借方と貸方って結局何なのかよく分からない」と感じていませんか。借方と貸方は、複式簿記の基本的な概念です。取引を仕訳の形で記録し、正確な決算書を作成するためには、借方と貸方の理解が欠かせません。
本記事では、借方と貸方の意味や役割を解説し、無理なく覚えられる方法を紹介します。仕訳をするうえで重要な勘定科目の分類やコツなど、経理の基礎知識も身につけましょう。
この記事の目次
借方・貸方とは?
借方・貸方とは、取引を記録する方法の1つである「複式簿記」における概念です。
簿記とは、日々の取引やお金の流れを記録することです。簿記には「単式簿記」と「複式簿記」があり、多くの会社では複式簿記が採用されています。
複式簿記では、一つひとつの取引を「仕訳」という形式で記録します。下記のように、勘定科目と金額を左右に分けて記載する方法です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
上記は、売上が発生し、代金として現金10,000円を受け取ったことを示します。「現金 10,000」の部分を借方、「売上 10,000」の部分を貸方と呼びます。つまり、仕訳の左側が借方、右側が貸方です。
借方・貸方という言葉の意味を突き詰めると、中世ヨーロッパの商習慣にまでさかのぼります。しかし、2つの言葉の意味を厳密に覚えなくても仕訳は可能です。実務においては、仕訳の際の記載場所を表す言葉として理解しておけば問題ありません。
複式簿記の考え方
複式簿記は、1つの取引を2つの面から見て記録する方法です。たとえば、5,000円の商品を購入して現金5,000円を支払った場合を考えましょう。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 商品 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
この場合、「お金を支払った」「商品を入手した」という2つのことが同時に起こっています。「商品を入手した」ことが理由で、その結果として「お金を支払った」といえます。
このように、1つの取引について理由・原因と結果の両面から記録するのが、複式簿記の考え方です。なお、単式簿記は単にお金の出入りのみを記載する方法です。
複式簿記が必要な理由
複式簿記で取引を記録することで、会社の財務状況やお金の流れを正確に把握できます。
たとえば、「仕入代金を取引先へ支払う」「銀行へ振込手数料を支払う」という2つの行為は、金銭の支払という点では同じでも目的が異なります。両者に異なる勘定科目を使って区別して記録すると、取引の性質や詳細を把握しやすくなり、分析や戦略策定にも有効です。
また、「売掛金」「買掛金」など、将来的な支払や入金が確定しているものの実現していない取引を記録することも可能です。「いついくら入金されるのか」「いついくら支払う必要があるのか」という情報があれば、将来の見通しも立てやすくなります。
加えて、複式簿記で記録することは、青色申告の要件の1つです。必要な要件を満たして青色申告をすると、所得税の計算時に最大で65万円の「青色申告特別控除」を受けられます。節税できる可能性があることも、複式簿記が広く利用されている理由です。
取引を正確に記録するには借方・貸方の理解が不可欠
取引を記録する最終的な目的は、決算書の作成です。
決算書とは、1年など一定期間の財産や損益の状況をまとめた書類で、財務諸表とも呼ばれます。決算書の主なものに、貸借対照表と損益計算書があります。
決算書を作るまでには、次の工程を経なければなりません。
- 仕訳の作成
- 仕訳をもとに総勘定元帳に記載
- 試算表を作成して集計・確認
- 決算整理
- 決算書の作成
仕訳で記録した内容は、上記の工程すべての土台です。借方・貸方を正確に理解して仕訳をしなければ、最終的に作成される決算書も誤ったものとなります。
あとから修正することなく、スムーズに決算書を作成できるよう、借方と貸方についてしっかりと理解しましょう。
借方と貸方の覚え方
借方と貸方は、意味をイメージしにくい言葉です。仕訳に慣れないうちは、どちらが借方でどちらが貸方なのか混乱するかもしれません。そこで以下では、借方と貸方は左右どちらなのかを覚える方法を2つ紹介します。
ひらがなの「はらい」の方向で覚える
借方と貸方をひらがなで書くと「かりかた」「かしかた」です。借方の「り」は左にはらい、貸方の「し」は右にはらうため、「借方は左、貸方は右」と覚える方法があります。
漢字をひらがなにして考えるだけであるため、覚えやすい方法です。
増減のイメージで覚える
借方(左)には「入ってくると嬉しいもの」、貸方(右)には「入ってくると嫌なもの」を記載するイメージで覚える方法もあります。
たとえば、現金が入ってくると会社にとってプラスとなり、嬉しいイメージが思い浮かぶでしょう。現金が入金された場合は、借方に記載します。
逆に、将来的に支払う義務のある買掛金は、会社にとっての出費でありマイナスのイメージが思い浮かぶでしょう。買掛金が発生した場合は、貸方に記載します。
仕訳の経験を重ねることでこうしたイメージが身につくと、借方・貸方のいずれに記載するかを判断しやすくなるでしょう。
借方・貸方に記載する内容と方法
借方と貸方のそれぞれには、勘定科目と金額を記載します。勘定科目にはさまざまなものがあり、その性質によって5つのグループに分類できます。
以下では勘定科目のグループと、左右どちらに記載するかのルールをみていきましょう。
勘定科目の5グループ
勘定科目とは、取引の内容を分かりやすくする見出しのようなものです。さまざまなものがありますが、その性質に注目すると次の5つに分類できます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 費用
- 収益
それぞれの分類について、以下でみていきましょう。
資産
資産とは、会社が保有する財産です。会社が所有する財産のうち、利益を生み出し得るものが該当します。
資産の主な勘定科目は次のとおりです。
- 現金
- 普通預金
- 当座預金
- 売掛金
- 受取手形
- 商品
- 材料
- 土地
- 建物
- 機械装置
- 車両
- 特許権
- ソフトウェア
- 貸付金 など
売掛金や受取手形など、将来的に金銭になるものも資産に該当します。土地や建物といった形のある資産のほか、ソフトウェアや特許権など形がなくても利益を生み出し得るものも、資産に含まれます。
負債
負債とは、会社が支払や返済をしなければならないものを指します。
負債の主な勘定科目は次のとおりです。
- 買掛金
- 支払手形
- 未払金
- 未払費用
- 預り金
- 賞与引当金
- 修繕引当金
- 借入金 など
買掛金や支払手形、未払金などは、いずれ金銭を支払わなければなりません。預り金とは、会社が従業員や取引先から一時的に預かり、やはり将来的に支払う必要のあるものを指す勘定科目です。源泉徴収をした社会保険料や所得税などの処理に使います。
賞与引当金や修繕引当金は、将来的な賞与の支払や修繕に備えて計上する引当金です。実際に支出が発生していなくても、資産とは区別して計上します。
資産をプラスの財産と表現するならば、負債はマイナスの財産といえます。会社の「借金」と考えてもよいでしょう。
純資産
純資産とは、資産から負債を差し引いた金額であり、返済する義務のない資産を指します。
純資産の主な勘定科目は次のとおりです。
- 資本金
- 資本準備金
- その他資本剰余金
- 利益剰余金
- 評価・換算差額等
- 新株予約権 など
純資産には、株主から調達したお金や、株主へ配当を行わず蓄積したお金などが含まれます。投資有価証券や土地などの評価損益も、純資産のうち評価・換算差額等として計上されます。
費用
費用とは、会社が収益を得るために支払った対価のことです。
費用の主な勘定科目は次のとおりです。
- 仕入
- 給料手当
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 消耗品費
- 支払手数料 など
費用が発生すると現金や預金が出ていくため、多くの場合で借方に記載されます。
収益
収益とは、会社が商品やサービスなどを提供することで獲得した収入です。
収益の主な勘定科目は次のとおりです。
- 売上
- 受取利息
- 雑収入 など
収益が発生すると現金や預金が入ってくるため、多くの場合で貸方に記載されます。
関連記事:【2025年最新版】実務で使える勘定科目一覧と仕訳ミスがなくなる基本ルール
グループごとの記載のしかた
借方・貸方のどちらに記載するかは、勘定科目のグループごとに異なります。各グループが増えた場合・減った場合の記載箇所は次のとおりです。
| 増えた | 減った | |
|---|---|---|
| 資産 | 借方 | 貸方 |
| 負債 | 貸方 | 借方 |
| 純資産 | 貸方 | 借方 |
| 費用 | 借方 | 貸方 |
| 収益 | 貸方 | 借方 |
上記を丸暗記する必要はありませんが、慣れないうちは参考にするとよいでしょう。
借方・貸方を理解して仕訳をするコツ
借方と貸方のルールを守って仕訳をするために、次のコツを知っておきましょう。
- 借方と貸方の合計金額を一致させる
- 仕訳が複数行になる場合もあると知っておく
- 分かりやすいものから記載する
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
借方と貸方の合計金額を一致させる
借方と貸方をそれぞれ合計した金額は、必ず一致します。たとえば、広告宣伝費に現金20,000円を支払った次の仕訳をみてみましょう。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
借方と貸方の金額はいずれも20,000円であり、一致しています。仕訳をしたら、双方の金額が同じになるかどうかをまず確認しましょう。
仕訳が複数行になる場合もあると知っておく
1つの仕訳であっても、借方・貸方に複数の勘定科目が入ることで、仕訳が複数行となる場合もあります。下記は売掛金15,000円が入金された際に、振込手数料として500円がマイナスされた場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 14,500 | 売掛金 | 15,000 |
| 支払手数料 | 500 | ||
資産である普通預金と費用である支払手数料の増加は、借方に記載します。資産である売掛金の減少は、貸方に記載します。
上記のように、資産と費用という異なる性質の勘定科目が、同時に借方に入るケースも珍しくありません。複雑な仕訳となる場合がある点にも注意しましょう。
なお、上記の仕訳では、借方と貸方の合計金額はそれぞれ15,000円となり、一致しています。複数行にわたる仕訳でも、借方と貸方で金額が一致するという原則は変わりません。
分かりやすいものから記載する
仕訳のイメージが浮かびにくい取引もあります。無理に仕訳全体を考えるのではなく、分かるものから記載するのが仕訳のコツです。
たとえば、費用を現金で支払う仕訳を考えてみましょう。「現金が増えたら借方」というイメージがあれば、その逆を考えて「現金が減ったら貸方」と思い当たるでしょう。
したがって、貸方に勘定科目「現金」と金額を記載します。そうすれば、空いている借方に費用の勘定科目を記載すればいいと判断できます。
借方・貸方について勘定科目のグループごとに丸暗記するのではなく「まず何が動いた?」「それが動いた理由は?」と考えることで、仕訳の基本を自然に身につけられるでしょう。
借方・貸方と決算書の関係性
決算書の主なものに、貸借対照表と損益計算書があります。以下では、借方・貸方を理解して正しく仕訳をすることが、それぞれの書類にどうつながるのかを解説します。
貸借対照表
貸借対照表とは、会社が保有する資産や権利について記載する書類です。勘定科目の5つのグループのうち、資産・負債・純資産について記載します。
貸借対照表は左右に分かれており、借方・貸方のルールと同様に、左には会社が持つ資産、右には負債・純資産を記載します。左右の合計金額が一致することも、仕訳と同様です。
| 資産 | 負債 |
| 純資産 |
貸借対照表の左側を見れば、会社の資産がどのような形態で保有されているか、どのように運用されているかが分かります。右側を見れば、資産がどのような手段で調達されたのか、そのうち返済の必要がある負債はどれだけあるのかが分かります。
損益計算書
損益計算書とは、会社が得た利益や損失について記載する書類です。勘定科目の5つのグループのうち、費用と収益について記載します。
一般的な損益計算書の様式では、左に各勘定科目、右側にそれぞれの金額が記載されます。売上高や売上原価、諸費用のほか、営業外の収益・費用を記載し、それぞれを加減していくと最終的な当期純利益が分かる構成です。
損益計算書
| 科目 | 金額 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 100,000,000 | |
| 売上原価 | 60,000,000 | |
| 売上総利益 | 40,000,000 | |
| 販売費および一般管理費 | ||
| 給料手当 | 10,000,000 | |
| 賞与 | 3,000,000 | |
| 法定福利費 | 1,400,000 | |
| 福利厚生費 | 50,000 | |
| 広告宣伝費 | 10,000 | |
| 交際費 | 130,000 | |
| 会議費 | 15,000 | |
| 水道光熱費 | 1,000,000 | |
| 支払手数料 | 300,000 | |
| 租税公課 | 3,000 | 15,908,000 |
| 営業利益 | 24,092,000 | |
| 営業外収益 | ||
| 受取利息 | 7,000 | |
| 雑収入 | 2,000 | 9,000 |
| 営業外費用 | ||
| 支払利息 | 3,000 | 3,000 |
| 経常利益 | 24,098,000 | |
| 税引前当期純利益 | 24,098,000 | |
損益計算書は「借方が左で貸方が右」という記載方法ではありません。しかし、「費用と収益どちらであるのか」が理解できていないと正確な記載は困難です。簿記の基本である借方と貸方の考え方が根底になければ、損益計算書は作成できません。
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まとめ
借方と貸方は、複式簿記における仕訳の基本的な概念です。「借方と貸方のどちらに記載するか」で仕訳の意味する取引が大きく変わってしまうため、仕訳のしかたをしっかりと理解しましょう。
一つひとつの仕訳が正確であれば、会社の状況を正しく反映する決算書を作成できます。簿記の基礎である借方と貸方を正しく理解し、経営判断や税金の計算に役立てましょう。
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- 「楽楽精算」コラム編集部
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