毎月の請求書発行業務に多くの時間と手間をとられていないでしょうか。紙とPDFが混在した二重管理、電子帳簿保存法への対応に関する不安——こうした課題を抱える経理担当者の方は少なくないかと思います。
請求書をPDFで発行・送付・保存することは、法的に有効です。さらに、正しい方法で電子化を進めることで、業務効率化と、電子帳簿保存法やインボイス制度への確実な対応を同時に実現できます。
この記事では、請求書のPDF化に関する基礎知識から、電子帳簿保存法の保存要件・保存期間、送付時のマナーや注意点、そして請求書発行を効率化する方法まで、実務担当者の方に向けてわかりやすく解説します。請求書のPDF化を検討している方や、現在の管理方法に課題を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

請求書のPDF化とは、従来、紙に印刷して郵送していた請求書を、PDF形式の電子データとして発行・送付・保存する業務形態への移行を指します。ペーパーレス化による業務効率の改善やコスト削減を目的に、PDF形式での請求書発行に切り替える企業は年々増加しています。
請求書は、紙であってもPDF形式の電子データであっても、法的に有効です。そもそも、日本の法律において請求書の発行自体は義務付けられておらず、その形式についても特定のフォーマットを定めた規定はありません。メールへの添付やWebサービスを通じた送付など、電子的な方法で発行・送付した請求書も、紙による送付と同様の有効性を持ちます。
ただし、請求書をPDFで発行・受領する行為は「電子取引」に該当するため、電子帳簿保存法の対応が必要になります。2024年1月の電子帳簿保存法の改正以降、電子取引で授受した請求書データは、電子データのまま保存することが義務付けられており、紙に印刷して保存する方法は原則として認められなくなりました。つまり、「PDFで受け取った請求書を印刷してファイリングする」という運用は、現在では法律違反にあたるおそれがあります。
また、2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)においても、適格請求書はPDF形式での発行・受領が認められています。登録事業者は取引先(課税事業者)から求められた際に適格請求書を発行する義務があり、その控えを適切に保存することが求められます。PDF形式であっても、記載事項や保存要件を正しく満たすことが重要です。
請求書のPDF化は単なるペーパーレス化ではなく、電子帳簿保存法やインボイス制度といった法改正への対応と一体で進める必要がある取り組みといえるでしょう。
請求書のPDF化を検討する際、まず押さえておきたいのが「紙とPDFで何がどう変わるのか」という点です。コスト・業務効率・法令対応・テレワーク対応など、複数の観点から両者を比較することで、自社にとってのPDF化のメリットと、移行にあたって準備すべき事項を整理しやすくなります。
| 比較軸 | 紙の請求書 | PDF請求書 |
|---|---|---|
| 送付方法 | 郵送(数日のタイムラグが発生) | メール・Web配信(即時送付が可能) |
| 印刷・郵送コスト | 用紙代・インク代・封筒代・切手代が発生 | 原則不要 |
| 保管スペース | 物理的なファイリングスペースが必要 | 不要(サーバーやクラウドで管理) |
| 電子帳簿保存法の対応 | 原則として紙保存でよい | 電子データのまま保存が義務 |
| テレワーク対応 | 印刷・封入・投函など出社が必要な作業が残る | インターネット環境があれば在宅でも完結 |
| 検索・参照のしやすさ | 大量の書類から手作業で探す必要がある | ファイル名や条件で即時検索が可能 |
| 修正・再発行 | 印刷・封入・再郵送の手間が発生 | 修正データを再送付するだけで対応可能 |
表からもわかるとおり、PDF請求書への移行は、コスト削減と業務効率化の両面で大きなメリットをもたらすと考えられます。特に、取引先の数が多い企業や、月次の請求業務に多くの工数をかけている企業ほど、その効果は大きくなる傾向があります。
一方で、注意すべき点もあります。PDFで発行・受領した請求書は電子取引に該当するため、電子帳簿保存法の要件を満たした形での電子データ保存が必要です。紙の請求書と同じ感覚で運用を続けることはできないため、システムや社内ルールの整備を並行して進めることが重要といえます。
また、すべての取引先がPDF対応に切り替えられるわけではありません。取引先の状況によっては、引き続き紙での対応が必要なケースも生じます。「PDFと紙が混在した二重管理」という状態にならないよう、移行計画を丁寧に設計することが、スムーズなPDF化の第一歩となるでしょう。
請求書をPDFで発行・受領する場合、電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応は避けて通れません。2024年1月以降、電子取引で授受した請求書データは電子データのまま保存することが義務付けられており、正しい要件を理解したうえで運用体制を整えることが求められます。
まず、電帳法には以下の3つの区分があります。
| 区分 | 内容 | 対応の任意・義務 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 自社で電子的に作成した帳簿・書類の保存 | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受領した書類をスキャンして電子保存 | 任意 |
| 電子取引 | メールやWebを通じて電子的に授受した取引情報の保存 | 義務(2024年1月より) |
PDFで請求書を発行・受領するやり取りは「電子取引」に該当します。そのため、送受信した請求書の電子データは、以下にて説明する「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たした形で保存しなければなりません。
真実性の確保とは、保存された電子データが改ざんされていないことを担保するための要件です。以下の4つのいずれかを満たすことが求められます。
タイムスタンプとは、電子データがある時点で存在していたこと、およびその後改ざんされていないことを証明する技術的な仕組みです。専用の電子帳票発行・保存システムを利用することで、タイムスタンプの付与を自動化できる場合もあり、実務上の負担を軽減できると考えられます。
関連記事:請求書にタイムスタンプは必要?法改正で変わったスタンプの付与要件
可視性の確保とは、保存した電子データを必要なときにすみやかに確認・出力できる状態を維持するための要件です。具体的には、以下のすべてを満たすことが求められます。
2年前の売上高が5,000万円以下の事業者で、税務調査時に電子データのダウンロードに応じられる場合は、検索機能の確保は不要とされています(※1)。自社の規模に応じて、必要な対応範囲を確認しておくとよいでしょう。
なお、請求書の保存期間は電子データでも紙と同様です。法人は原則7年間(欠損金が生じた事業年度は最長10年間)、個人事業主は原則5年間(消費税の課税事業者は7年間)の保存が必要です(※2)。
参考 ※1:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)」
※2:e-Gov 法令検索「法人税法施行規則 第67条第2項」、「所得税法施行令 第63条第1項」、「消費税法施行令 第50条第1項」
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の複数税率(8%・10%)に対応するために導入された制度です。仕入税額控除を受けるためには、売手である登録事業者が発行した「適格請求書(インボイス)」の保存が必要となります。この適格請求書についても、PDF形式での発行・受領が認められており、電子データとして管理することが可能です。
インボイス制度の開始にともない、請求書の記載事項はこれまでの「区分記載請求書」から変更されています。以下の表で、追加・変更となった項目を確認しておきましょう。
| 記載項目 | 区分記載請求書 | 適格請求書(インボイス) |
|---|---|---|
| 発行者の氏名または名称 | 必要 | 必要 |
| 登録番号 | 不要 | 必要(★新規追加) |
| 取引年月日 | 必要 | 必要 |
| 取引内容(軽減税率対象の場合はその旨) | 必要 | 必要 |
| 税率ごとの税抜価額または税込価額の合計額および適用税率 | 税込価額の合計のみ | 必要(★変更・追加) |
| 消費税額等 | 不要 | 必要(★新規追加) |
| 交付を受ける事業者の氏名または名称 | 必要 | 必要 |
参考:国税庁「インボイス制度に関するQ&A目次一覧」
インボイス制度への対応において、特に注意が必要な点が2つあります。以下にて詳しく解説します。
適格請求書発行事業者の登録番号は国税庁に登録された事業者にのみ付与されるものであり、取引先から受領した請求書の登録番号が実際に登録されているかどうかを確認することが求められます。
国税庁の公表しているデータベースで照合できますが、取引先の数が多い企業では確認作業だけでも相当な工数が発生する可能性があります。
適格請求書をPDFで受領した場合は電子取引に該当するため、前述の電子帳簿保存法の要件を満たした形で電子データのまま保存しなければなりません。消費税の課税事業者は最長7年間の保存が必要であり、保存期間中はいつでも検索・出力できる状態を維持することが求められます。
インボイス制度と電子帳簿保存法、この2つの法令への対応を同時に進めることは、経理担当者にとって大きな負担となりえます。PDF請求書の発行・受領・保存を一元的に管理できるシステムを活用することで、対応漏れのリスクを低減しながら業務効率化を図ることが期待できるでしょう。
請求書をPDFで送付することは法的に有効ですが、取引先との円滑な関係を維持しながらスムーズに運用するためには、いくつかのマナーと注意点を押さえておく必要があります。PDF化への移行を検討している方は、以下の3つのポイントを事前に確認しておきましょう。
請求書の送付方法を紙からPDFに切り替える際は、必ず事前に取引先へ案内し、同意を得ることが大切です。取引先によっては、社内規定や業務システムの都合上、紙の請求書原本が必要なケースもあります。また、PDF形式での受領に対応するための社内手続きが必要な企業もあるため、切り替えの時期に余裕をもって案内することが望ましいといえます。
案内文には、送付方法の変更内容・切り替え時期・受領に必要な環境・問い合わせ先などを明記すると、取引先の理解と協力を得やすくなるでしょう。対応が難しい取引先については、引き続き紙での送付を継続するなど、柔軟な対応を心がけることが重要です。
請求書には取引金額・口座番号・取引先名など、機密性の高い情報が含まれています。メールにPDFファイルを添付して送付する場合は、ファイルにパスワードを設定するなどのセキュリティ対策が必要です。
ただし、パスワード付きZIPファイルをメールで送付し、パスワードを別メールで送る方法(いわゆるPPAP)は、近年セキュリティ上の脆弱性が指摘されており、対応を禁止している企業も増えています。取引先の数が多い場合や、よりセキュアな運用を求める場合は、請求書電子化サービスやクラウドサービスを活用したファイル共有への移行を検討することをおすすめします。
紙の請求書・PDF請求書を問わず、請求書への押印は法的に義務付けられていません。しかし、日本の商習慣として押印を正式な証明とみなす考え方は根強く、取引先によっては電子印鑑の押印を求めるケースがあります。
PDF化への移行にあたっては、電子印鑑が必要かどうかを取引先に事前確認しておくとよいでしょう。また、自社の社内規定と整合しているかどうかも併せて確認することをおすすめします。
電子帳簿保存法では、保存した電子データを検索できる状態に維持することが求められています。そのため、PDFファイルの命名ルールを社内で統一しておくことは、法令対応の観点からも重要な取り組みといえます。
ファイル名には、以下の3つの要素を含めることを基本ルールとして設定することをおすすめします。
上記のルールに則った場合、ファイル名は「20250601_株式会社◯◯_請求書_110000円.pdf」のような形式となります。取引年月日・取引金額・取引先名の3項目を含めることで、電子帳簿保存法が求める検索機能要件を満たしやすくなります。また、税務調査などの際にもすみやかにデータを提示できる状態を維持できるでしょう。
命名ルールは経理担当者全員が同じ基準で運用できるよう、社内マニュアルやチェックリストとして文書化しておくことをおすすめします。担当者が変わっても一貫した管理が維持できる体制を整えることが、請求書PDF管理の効率化と法令対応の両立につながると考えられます。
取引先から紙で受領した請求書や、自社で保存している請求書の控えをPDF化したい場合、スキャナや複合機を使って電子データに変換することが可能です。国税庁の見解では、スキャナ専用機・複合機だけでなく、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像をPDF化する方法も認められています。
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和7年6月)」
ただし、紙の請求書をスキャンしてPDF化する「スキャナ保存」には、電子帳簿保存法上の一定の要件を満たすことが必要です。「スキャンすれば自由に電子保存できる」というわけではなく、以下に説明する要件への対応を前提として運用体制を整える必要があります。
紙の請求書をPDF化する主な方法は以下のとおりです。
スキャナ保存を行う際に満たすべき主な要件は以下のとおりです。
これらの要件への対応を確実に行うためには、JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)が認証する「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証」を取得したソフトウェアやサービスを利用することが有効と考えられます。認証を取得したサービスを選ぶことで、要件への適合状況を確認する手間を軽減できるでしょう。
参照:JIIMA公式サイト
なお、スキャナ保存はあくまで「紙で受領した書類を電子化して保存する」ための方法です。メールやWebサービス経由でPDFとして受領した請求書は電子取引に該当するため、スキャナ保存ではなく前述の電子取引の保存要件への対応が必要です。受領方法によって適用される要件が異なる点に注意しましょう。
請求書発行に関する業務を効率化するソリューションのひとつとして、株式会社ラクスが提供する「楽楽明細」があります。「楽楽明細」は、請求書をはじめとする各種帳票の作成・送付から、入金消込までまとめて効率化できるクラウド型の電子帳票発行システムです。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を図りながら、請求書のPDF化にともなう業務効率化を実現したい企業に適したサービスと考えられます。
「楽楽明細」の主な機能と、それぞれが解決できる課題は以下のとおりです。
基幹システムや会計システムから出力した請求データをCSV形式で取り込むだけで、大量の請求書をまとめて発行できます。手作業による入力ミスや発行漏れのリスクを低減できる点がメリットです。
PDF形式の請求書を取引先の専用サイトへWeb配信できるほか、Web対応が難しい取引先向けには郵送代行サービスとの併用も可能です。すべての取引先を一度にWeb配信に切り替える必要がなく、取引先の状況に合わせたスモールスタートが実現できます。
「楽楽明細」は電子帳簿保存法・インボイス制度の両方に対応しており、既存の請求書データをアップロードするだけで、レイアウトを変えずにインボイス(適格請求書)を発行可能です。
取引先が請求書データをダウンロード・確認したかどうかをシステム上でリアルタイムに把握できます。「請求書が届いているか」「確認されているか」といった問い合わせ対応の手間を軽減できると考えられます。
「楽楽明細」の導入によって請求書発行業務を大幅に効率化された事例として、不動産再生事業を手がける株式会社リアルゲイト様の事例をご紹介します。
導入前、同社では各営業担当者がメールに請求金額を手入力して送付しており、約500件にのぼる月次請求の対応に多くの時間と手間がかかっていました。請求書をPDF形式で発行・送付したいという社内の声を受け、請求書発行システムの検討を開始。「操作感のシンプルさ」「レイアウトのカスタマイズ性」「価格帯」の3点を重視して比較検討した結果、「楽楽明細」の導入を決定されました。
導入後は、請求データをCSVで一括取り込んで発行するだけというシンプルな業務フローに一本化され、以下のような成果が得られています。
営業担当者が請求業務から解放されたことで、本来の業務により多くの時間を充てられるようになり、社内全体の業務効率化にもつながったとのことです。請求書のPDF化と業務効率化を同時に実現したい企業にとって、参考になる事例といえるでしょう。
導入事例:株式会社リアルゲイト様「電子請求書発行システム導入による業務フローの見直しで作業時間が大幅削減!」
この記事で解説した内容を、最後に整理します。
請求書のPDF化は、単なるペーパーレス化にとどまらず、経理業務全体のデジタル化を推進するための重要な取り組みです。毎月の請求業務の効率化や法令対応に課題を感じている方は、まずは自社の現状を整理したうえで、電子化の仕組みづくりを検討してみてはいかがでしょうか。
「楽楽明細」の機能や導入事例について、さらに詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
「楽楽明細」のコラムでは請求書や領収書、支払明細書などの各種帳票の発行方法や、経理業務を効率化する方法などについてご紹介します!
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