監修者:安田 亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)
収入印紙は、契約書や領収書などの課税文書に課される印紙税を納付するための証票です。この記事では、収入印紙の基本的な仕組みから種類ごとの金額、具体的な貼り方までをわかりやすく解説します。

収入印紙とは、印紙税や登録免許税などの国税、各種手数料を納付するために国が発行している証票です。
契約書や領収書など、印紙税法で定められた課税文書に貼付し、消印を行うことで納税したことになります。取引金額や文書の種類によって必要な印紙税額は異なり、正しい金額の収入印紙を貼付しなければなりません。
ここでは、収入印紙と似た証票との違いや、収入印紙が必要かどうかを判断するポイントについて解説します。
収入印紙は、収入証紙や普通切手とは異なります。いずれも一定の金銭の支払いを証明する証票という点で共通していますが、以下のような違いがあります。
| 項目 | 収入印紙 | 収入証紙 | 普通切手 |
|---|---|---|---|
| 発行元 | 国(日本政府) | 地方公共団体 | 日本郵便 |
| 主な用途 | 印紙税の納付 | 各種手数料の納付(自治体・都道府県) | 郵便料金の支払い |
| 使用場面 | 不動産契約書、請負契約書、領収書など | 運転免許申請、各種証明書発行など | 郵便物・ゆうパックなどの発送 |
収入印紙は国税である印紙税の納付に使用されるものであるのに対し、収入証紙は地方自治体に納める手数料などに使うもので、普通切手は郵便料金を支払うための証票です。
収入証紙は都道府県や自治体への手数料納付に使われ、運転免許証の申請や各種証明書の取得時などに利用されます。一方、普通切手は郵便物を送付する際の料金支払いに使用されるものです。
これらは見た目が似ているため混同されやすいですが、目的や使用先が異なるため、誤って使用しないよう注意が必要です。
収入印紙が必要になるのは、印紙税法で定められた「課税文書」に該当する書類です。代表的な書類は、以下のとおりです。
これらには、契約内容や取引金額に応じて定められた金額の収入印紙を貼付する必要があります。
一方で、すべての文書に収入印紙が必要なわけではありません。たとえば、クレジットカード決済の取引では、収入印紙が不要です。クレジットカード払いの場合、商品やサービスの提供時点では店舗側が直接現金を受け取るわけではありません。
そのため、カード決済時に発行されるレシートや領収書は、通常の「金銭の受取書」には該当せず、原則として収入印紙を貼る必要はありません。
ただし、書類上に「クレジットカード決済」「カード利用分」など、現金受領ではないことが分かる記載がない場合には、通常の領収書として扱われる可能性があります。
その結果、印紙税の課税対象と判断され、収入印紙の貼付が必要になるケースもあるため注意が必要です。税務調査で指摘を受けないよう、決済方法が明確に分かる表記を入れておくことが重要です。
また、電子契約書や電子メールで発行された請求書、PDF形式で送付される領収書など、紙として交付されない電子文書は原則として印紙税の対象外です。
紙で作成した文書であっても、営業に関係しない個人的な受取書や、一定金額未満の文書などは非課税となります。文書の名称だけで判断するのではなく、内容や交付方法の確認が必要になるでしょう。
参考:e-Gov 法令検索「印紙税法」
収入印紙が必要かどうかを判断する際は、まずその文書が印紙税法上の課税文書に該当するかを確認します。
国税庁は、「課税文書」に該当するかどうかの判断として、以下の3点を挙げています。
判断のポイントになるのは、「どのような内容が記載されているか」「誰に交付する文書か」「紙で作成されているか」といった点です。
たとえば、契約の成立や金銭の受領を証明する文書は課税対象となるケースが多く、取引金額によって必要な印紙税額も変わります。
一方で、社内保管用の控えやコピー、電子データのみでやり取りする文書は対象外になることがあります。また、同じ「領収書」でも、営業に関する受取書なのか、個人的な金銭授受なのかによって扱いが異なります。
判断に迷う場合は、国税庁の印紙税額一覧表を確認するほか、税理士や税務署へ相談するとよいでしょう。
参考:国税庁「No.7100 課税文書に該当するかどうかの判断」
参考:国税庁「印紙税額」
収入印紙の金額は、文書の種類や記載された契約金額・受取金額によって異なります。契約書や領収書などは、それぞれ定められた区分に従って印紙税額が決まっているため、ルールを確認しておくことが重要です。
ここでは、収入印紙が必要な代表的な文書と記載金額ごとの印紙税額を紹介します。
契約書に貼る収入印紙の金額は、契約の種類と記載金額によって変わります。たとえば、不動産売買契約書(1号文書)や請負契約書(2号文書)では、契約金額が大きくなるほど印紙税額も高くなります。
特に請負契約書は、工事請負契約や成果物の完成を目的とする業務委託契約など、ビジネスで日常的に発生する文書です。
請負契約書に貼付する収入印紙の金額は、下表のとおりです。
| 請負契約書の記載金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載がないもの | 200円 |
参考:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
領収書は印紙税法上の「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」に該当し、記載されている受取金額が5万円以上の場合、収入印紙を貼る必要があります。5万円未満は非課税です。
受取金額は原則として消費税込みの金額で判定されますが、領収書に消費税額が明確に区分して記載されている場合には、税抜金額で判定することが認められています。
たとえば、領収書に「商品代金47,000円、消費税4,700円、合計金額51,700円」と記載してある場合の受取金額は47,000円であることから、印紙税の課税対象外(非課税)となります。
また、領収書は「売上代金の受取書」と「売上代金以外の受取書」で、印紙税の金額が異なります。
領収書に貼付する収入印紙の金額は以下のとおりです。
【売上代金の受取書の場合】
| 領収書の記載金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 600円 |
| 300万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
| 1,000万円超2,000万円以下 | 4,000円 |
| 2,000万円超3,000万円以下 | 6,000円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 2万円 |
| 1億円超2億円以下 | 4万円 |
| 2億円超3億円以下 | 6万円 |
| 3億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 15万円 |
| 10億円超 | 20万円 |
| 受取金額の記載がないもの | 200円 |
【売上代金以外の受取書の場合】
| 領収書の記載金額 | 収入印紙の金額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上 | 200円 |
参考 : 国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」
収入印紙は、主に以下の場所で購入できます。
収入印紙は、全国の郵便局や法務局、一部のコンビニエンスストアなどで購入できます。特に郵便局では幅広い金額の収入印紙を取り扱っているため、高額な契約書用の印紙が必要な場合にも利用しやすいでしょう。
コンビニでは200円など比較的少額の収入印紙を中心に取り扱っていることが多く、店舗によっては在庫が限られる場合があります。大きな金額の印紙が必要な場合は、郵便局や法務局での購入を検討するとよいでしょう。
自治体窓口でも購入できる場合がありますが、取り扱いの有無は自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。また、自治体窓口では収入証紙を扱っているため、購入時は間違えないように注意しましょう。
金券ショップやネットオークションは、額面の価格よりも安価で購入できる場合もある点がメリットです。ただし、金券ショップでは、店舗によって在庫状況や取り扱いの種類が異なります。ネットオークションは個人間でやり取りすることもあり、トラブルには注意が必要です。
収入印紙は、必要な金額を用意するだけでなく、正しい方法で貼付し、消印まで適切に行うことが重要です。単に貼付しただけでは納税が完了したことにはならず、消印によって使用済みであることを明確にする必要があります。
貼り方や消印に不備がある場合、印紙税を適切に納付していないと判断される可能性があり、注意が必要です。
ここでは、収入印紙を貼る位置や消印の押し方など、基本的なルールを解説します。
収入印紙は切手と同様に裏面にのりが付いているため、水分で湿らせるなどして課税文書へ貼付します。収入印紙を貼る位置について、法律上の決まりはありませんが、見やすい場所に貼付します。
一般的に、契約書の場合は左上の空いている部分、領収書の場合は印紙欄があれば欄内に、なければ文字や金額にかからない余白部分に貼ります。
2枚以上貼る場合は重ねずに並べて貼り、複数ページに及ぶ契約書の場合は、表紙や契約内容が記載されたページに貼るケースが一般的です。
収入印紙を貼付したあとは、「消印」を行う必要があります。消印とは、収入印紙と課税文書の両方にまたがる形で押印や署名を行い、その収入印紙がすでに使用済みであることを示す印です。収入印紙は貼るだけでは不十分で、消印まで行ってはじめて適切に納税した状態とみなされます。
消印の方法としては、会社印や角印、認印などの押印のほか、ボールペンなどによる署名でも認められています。一方で、斜線を引くだけだったり、「印」という文字を記載するだけの方法では、消印としては認められないため注意が必要です。
さらに、消印は収入印紙部分のみを対象にするのではなく、印紙と課税文書の両方にまたがるように押印または署名を行う必要があります。これにより、その収入印紙が当該文書に適切に使用されたことを明確にできます。
収入印紙に関するルールを守らなかった場合、過怠税が課されることがあります。特に貼り忘れや消印漏れは起こりやすく、税務調査などで指摘を受けて気づくケースも少なくありません。
ここでは、収入印紙の貼付に関する代表的な不備とその影響について解説します。
本来収入印紙が必要な文書に貼り忘れがあると、印紙税を納めていない状態とみなされます。貼り忘れに気づいた場合は、速やかに所轄税務署に確認し、必要な対応を行いましょう。
過怠税は、本来納めるべき印紙税額に加えて、その2倍に相当する金額が上乗せされるため、結果として納付すべき印紙税の3倍に相当する金額が徴収される仕組みです。ただし、税務調査で指摘を受ける前に自主的に申告・申し出を行い、認められた場合には軽減措置が適用されます。この場合の過怠税は、本来の印紙税額に加えて、その10%相当額を加算した金額、つまり本来の印紙税額の1.1倍に軽減されます。
参考:国税庁「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」
収入印紙を誤った金額で貼ってしまった場合、不足していれば追加で納税が必要になることがあります。たとえば、本来400円必要な文書に200円の収入印紙しか貼っていなかった場合は、不足分については納税したことになりません。貼り忘れた場合と同じく過怠税が課される可能性があります。
一方で、必要以上に高額な収入印紙を貼ってしまった場合は、手続きにより還付請求ができます。
還付請求できるのは、次のような場合です。
還付手続きは、貼り間違いや必要額を超えて貼付した文書の作成から5年以内に、「印紙税過誤納確認申請書」を所轄の税務署へ提出して行います。
また、未使用で汚損していない収入印紙については、最寄りの郵便局で他の額面の収入印紙と交換する交換制度を利用できます。
収入印紙は、文書に貼り付けただけでは印紙税を納付したことにはなりません。貼付後には必ず消印を行う必要があり、消印を忘れていると過怠税の対象となる可能性があります。
消印には、使用済みの収入印紙を再利用できないようにする役割があり、印紙税法でも定められている重要な手続きです。税務調査などで消印漏れを指摘された場合は、消印されていない収入印紙の額面と同額の過怠税が徴収されることがあります。そのため、収入印紙を貼付した際は、消印まで確実に行うことが大切です。
紙として交付されない電子文書は原則として印紙税の対象になりません。
近年は電子契約や電子領収書の利用が広がっており、印紙税負担の削減という観点からも注目されています。電子文書が印紙税の対象外とされる背景には、印紙税法における文書の考え方や、収入印紙による納税という仕組みが関係しています。
ここでは、電子文書が印紙税の対象にならない理由について解説します。
印紙税は、紙で作成・交付される課税文書に対して課される税金です。そのため、契約内容が同じであっても、電子契約サービス上で締結された契約書や、メール添付で送付されるPDFの領収書などは、原則として課税対象になりません。これは、印紙税法が「文書」を前提としているためです。
印紙税法第3条では、「課税文書を作成した者は、その文書について印紙税を納める義務を負う」と定められています。ここでいう「作成」とは、印紙税法基本通達第44条第1項において、「課税事項を記載した用紙などを、その文書本来の目的に沿って使用すること」とされています。
つまり、契約書や領収書などを紙で作成・交付する行為が「課税文書の作成」に該当するということです。一方で、電子契約における電子ファイルの送信やオンライン上での交付は、紙の文書を作成したとはみなされないため、原則として印紙税の課税対象にはなりません。
紙の原本を交付する場合にのみ納税義務が発生し、データだけで完結する取引には印紙税が課されない仕組みです。
参考:e-Gov 法令検索「印紙税法」
電子契約書や電子領収書は、法律上は電子データとして扱われており、紙の文書とは区別されています。そのため、クラウド上で契約を締結し、データのまま保存・管理している場合には、通常は印紙税の対象にはなりません。
ただし、電子契約であっても、その内容を紙に印刷して取引先へ交付した場合には、課税文書に該当する可能性があります。電子化による印紙税削減を検討する際は、「電子データのみで完結しているか」が重要なポイントになります。
印紙税は、収入印紙を文書に貼り付けることで納税する仕組みです。そのため、物理的な紙媒体が存在しない電子データには、そもそも収入印紙を貼付できません。
この制度上の前提から、電子契約や電子領収書は印紙税の対象外とされています。近年は業務効率化やペーパーレス化の推進に加え、印紙税負担を軽減できる点からも電子文書の利用が拡大しています。
ただし、電子契約サービスを利用していても、一部で紙の契約書を併用している場合には、その紙文書に印紙税が必要になるケースもあるため、運用ルールを明確にしておくことが大切です。
また、すべての契約が電子契約に対応しているわけではないことに注意が必要です。たとえば、任意後見契約は公正証書によって作成する必要があるため、電子契約のみで完結させることはできません。また、事業用定期借地権を設定する契約についても、公正証書での作成が求められています。
さらに、農地や採草放牧地に関する賃貸借契約については、電子データでの契約を認める規定が整備されていないため、紙の書面による契約が必要とされています。このように、一部の契約では法令上の要件により、現在も書面での契約締結が必要なことは把握しておきましょう。
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ここでは、「楽楽明細」の概要や収入印紙に関する業務負担を軽減できる理由を解説します。
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さらに、収入印紙を購入する手間や、社内での在庫管理、書類への貼付・消印作業も不要になります。紙運用では、印紙の貼り忘れや消印漏れなどのリスクもありますが、電子発行へ切り替えることでこうした管理の負担も軽減できます。また、紙の文書に必要な印刷・封入・郵送業務も削減できるため、経理担当者の作業効率向上にもつながるでしょう。
収入印紙は、課税文書に応じて適切な金額を貼付し、消印を行うことで印紙税を納める仕組みです。文書の種類や取引金額によって必要な印紙税額は異なり、貼付や消印の不備は過怠税が課される可能性もあります。
そのため、基本ルールを正しく理解し、対象となる文書や金額を事前に確認することが重要です。適切な運用を行うことで、税務リスクを防ぎ、スムーズな取引管理につながるでしょう。
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1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。
大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。 連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。
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