【社労士監修】残業手当とは?時間外手当との違いや正しい計算方法を具体的に解説

残業

残業手当を計算する人事労務担当者

「残業手当」という言葉は日常的に使われていますが、法律上の定義や正しい計算方法を正確に把握できているでしょうか。
一般的に残業手当とは、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働く「時間外労働」に対して支払う割増賃金を指します。
しかし、固定残業代や役職手当など、混同しやすい関連用語が多いため、誤った解釈は未払いトラブルや法令違反のリスクに直結しかねません。
そこでこの記事では、残業手当の基礎知識から種類ごとの違い、具体的な計算方法まで、実務に役立つポイントを詳しく解説します。

以下の記事では、残業の基礎知識から残業代の計算方法までを詳しく解説しています。

関連記事:残業代の正しい計算方法とは?残業の基礎知識からわかりやすく解説

この記事のポイント(要約)

POINT
  • 残業手当とは?
  • 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた労働に対し、割増賃金を加算して支払う賃金。
  • 残業手当の計算方法は?
  • 「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 法定外残業時間」で算出。
  • 残業手当の未払いリスクは?
  • 労働基準法違反による罰則、最長5年分の遡及支払い、社会的信用の失墜。
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この記事の目次

    残業手当とは?

    残業手当とは、1日8時間・週40時間の「法定労働時間」を超えた労働(時間外労働)に対して支払われる、割増賃金を指します。
    割増賃金とは、特定の条件下で従業員を労働させた場合に、通常の賃金に上乗せして支払う手当のことです。
    残業が発生した時間帯やタイミングにより、労働基準法では以下の通り割増率の下限が定められています。

    労働時間の区分 割増率
    時間外労働(1日8時間・週40時間を超える労働) 25%以上
    深夜労働(22時~翌5時の間の労働) 25%以上
    休日労働(週1日または4週4日以上の法定休日に行う労働) 35%以上
    月60時間を超える時間外労働 50%以上

    なお、これらの割増率は労働基準法が定める最低限の基準です。
    そのため、就業規則などで企業独自の高い割増率を設定し、手当を支給しても法的な問題はありません。

    そもそも残業とは?

    残業手当を正しく算出するための前提として、まずは「残業」の定義を整理しておきましょう。
    残業は、大きく「法定内残業」と「法定外残業」の2種類に分けられ、それぞれ割増賃金の支払い義務や注意点が異なります。
    ここでは、残業手当の支給ミスを防ぐために不可欠な、残業の基礎知識を解説します。

    残業は大きく分けて2種類

    残業は、「法定内残業」と「法定外残業(時間外労働)」の大きく2種類に分類されます。労働基準法では、1日の労働時間を原則8時間、1週間では40時間までと定められており、これを「法定労働時間」といいます。
    この法定労働時間を超えて労働させた場合は、労働基準法上の時間外労働にあたり、一般的に「法定外残業」と呼ばれます。
    一方で「法定内残業」とは、法定労働時間の範囲内であっても、会社の就業規則などで定めた「所定労働時間」(企業が就業規則などで定めた基本的な労働時間)を超えて働くケースを指します。
    所定労働時間は企業ごとに設定が異なるため、必ずしも法定労働時間と一致するわけではありません。
    どちらも現場では「残業」と総称されることが一般的ですが、割増賃金の支払い義務が発生するかどうかが異なるため、正しく区別して管理する必要があります。
    以下では、それぞれの違いをさらに詳しく見ていきましょう。

    (※)参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

    法定内残業

    法定内残業とは、所定労働時間を超えて働いていても、労働基準法で定められた「法定労働時間」の範囲内に収まっている残業を指します。
    たとえば、所定労働時間が1日7時間の会社で従業員が8時間勤務した場合、法定労働時間(8時間)に収まっているため、超過した1時間は「法定内残業」となります。
    この1時間は、法律上の「時間外労働」には当たらないため、25%以上の割増賃金を支払う法的義務は発生しません。
    ただし、就業規則や雇用契約で「所定労働時間を超えた場合に割増賃金を支払う」と独自に定めている企業もあります。
    自社の規定がどのようになっているか、改めて確認しておくことが重要です。

    法定外残業

    法定外残業とは、労働基準法で定める法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間外労働を指します。
    法定外残業に対しては、原則として25%以上、月60時間を超える分については50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
    さらに、法定外残業が深夜(22時~翌5時)に行われた場合は、深夜割増率が合算されます。たとえば、所定労働時間が8時間の会社で合計9時間働いた場合、超過した1時間が法定外残業です。
    この1時間が深夜帯(22:00~翌5:00)に該当すれば、「時間外25%以上 + 深夜25%以上 = 50%以上」の割増率が適用されます。
    適正な給与計算を行うためには、残業時間と深夜労働の重複を正確に把握し、就業規則の定めに沿って処理を進めることが重要です。

    法定外残業には36協定の締結が必要

    法定外残業を命じるには、企業と労働者の代表で「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出ることが不可欠です。未締結・未届けの状態で残業させた場合は原則として違法となるため、十分に注意しましょう。
    36協定とは「時間外・休日労働に関する協定」のことで、労働基準法第36条に基づき、企業は従業員へ例外的に時間外労働や休日労働を指示できるようになります。
    ただし、協定を締結しても無制限に残業を命じられるわけではありません。原則として「月45時間・年360時間」の上限規制を遵守する必要があります。
    臨時的な特別の事情によりこの上限を超える可能性がある場合は、「特別条項付き36協定」を締結しなければなりません。
    法定外残業が発生する可能性がある企業は、必ず事前に適切な手続きで締結・届出を済ませておきましょう。

    (※)参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

    2019年4月に残業の上限規制が施行開始

    残業(時間外労働)は、36協定を締結・届け出ていても、際限なく命じられるものではありません。労働基準法が定める上限規制を超えて労働させた場合は違法となります。
    原則として、残業の上限は「月45時間・年360時間」です。特別条項付き36協定を締結した場合でも、以下の通り厳格な追加上限(上限の特例)を遵守しなければなりません。

    • 年間:720時間以内
    • 複数月平均:2〜6か月平均で80時間以内(休日労働を含む)
    • 単月:100時間未満(休日労働を含む)
    • 超過回数:原則的な残業時間の上限(月45時間)を超えられるのは年6回まで

    これを超過した企業には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
    なお、この規制は2019年4月(中小企業は2020年4月)から施行され、2024年4月からは建設業やドライバー、医師などにも適用範囲が拡大されました。
    上限超過を未然に防ぐためには、勤怠管理システムなどを活用し、客観的かつ正確に労働時間を把握することが不可欠といえるでしょう。

    (※1)参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
    (※2)参考:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」

    残業手当と、時間外手当などの各種手当との違い

    ここからは、混同されやすい「残業手当」と「時間外手当」をはじめ、諸手当との違いを整理して解説します。
    これらは似た名称ですが、会社独自の定義や算定基準が異なれば、給与計算でのミスに直結しかねません。特に、固定残業代や役職手当との区別が曖昧な場合、未払いトラブルの原因となるため注意が必要です。
    正確な給与計算を行うために、各手当の法的根拠と性質の違いを正しく理解していきましょう。

    時間外手当との違い

    「残業手当」と「時間外手当」は同義で使われることもありますが、厳密には定義が異なります。
    用語の違いを整理すると、以下の通りです。

    • 時間外手当:労働基準法上で定められた法定労働時間を超えて行う「時間外労働」に対する割増賃金
    • 残業手当:上記の「時間外手当」に加え、法定内残業に対する企業独自の手当なども含めて、広く用いられる一般的な呼称

    つまり、時間外手当は「法律上の残業」に対する割増賃金を指します。対して残業手当は、法定内残業への支給分も含んだ「通称」として扱われるのが一般的です。
    こうした区分を正しく理解し、社内での呼称も統一することで、担当者間や従業員との認識齟齬を減らしましょう。

    固定残業手当との違い

    固定残業手当は、あらかじめ一定時間分の時間外手当を給与に組み込んで支払う方式です。実績に応じてその都度計算する一般的な残業手当(実績精算型)とは性質が大きく異なります。
    もしも設定された固定残業時間を超過した場合は、その差額を別途支払わなければなりません。これを行わないと労働基準法違反(割増賃金の未払い)となるため、厳重な注意が必要です。実際にトラブルとなるケースも多いため、厚生労働省は募集要項や求人票などへの詳細な明記を呼びかけています。(※)
    制度を正しく運用・明記するためには、まず「実際の残業時間に応じて支給額がどう変動するか」を具体的に把握しておく必要があります。
    ここでは、月20時間分の固定残業代を導入しているケースを例に、実際の支給パターンを確認してみましょう。

    <具体例:月20時間分の固定残業手当を支給している場合>

    • 実残業が25時間だった場合:固定分(20時間)に加え、超過した5時間分の割増賃金を「別途支給」する
    • 実残業が12時間だった場合:実際の残業が固定分を下回っていても、20時間相当額を「満額支給」しなければならない

    以上の例から分かる通り、固定残業代制と一般的な残業手当との大きな違いは、「あらかじめ給与の構成に一定額が含まれているかどうか」にあります。
    固定残業代制を適切に運用するには、従業員ごとの正確な労働時間を可視化し、超過分が発生した際の「確実な追加支給」を徹底することが、コンプライアンス遵守の第一歩となります。

    (※)参考:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします」

    休日出勤手当や深夜手当との違い

    休日出勤手当や深夜手当は、働く「日」や「時間帯」によって発生する割増賃金です。
    労働時間の長さ(法定外残業)を基準にする「残業手当」とは、発生の根拠が異なります。
    具体的な違いを整理すると、以下の通りです。

    手当の種類 対象シーン 割増率
    残業手当 法定内・外問わず対象となる可能性あり 法定外残業(時間外労働)に対しては25%~60%以上
    休日出勤手当 法定休日(週1日または4週4日以上)に行う労働 35%以上
    深夜手当 22時~翌5時の深夜時間帯に行った労働 25%以上

    (※)参考:厚生労働省「しっかりマスター 労働基準法編」

    各手当を計算する際は、「何時間働いたか」だけでなく「いつ働いたか」を切り分けて判定しなければなりません。
    給与計算のミスを防ぐためにも、就業規則にこれら判定の順序や重複時の計算ルールを明記し、運用を徹底しましょう。

    【シーン別】残業手当の計算方法

    法定外残業の残業手当は、通常の賃金に対して、残業内容に応じた割増率を掛けて計算します。
    基本的な計算式は以下の通りです。

    • 法定外残業の残業手当 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 法定外残業時間

    月給制の場合、「1時間あたりの基礎賃金」は「対象従業員の月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間」で算出します。この際、以下の手当は算定の基礎となる月給から除外することが可能です。

    • 家族手当
    • 通勤手当
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    (※)参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」

    ただし、住宅手当や家族手当などを「全員に一律で支給」している場合は、除外できず残業代計算の基礎(1時間あたりの単価を計算する際のベースとなる賃金)に含める必要があります。
    判断を誤ると未払い残業代が発生するため、自社の手当の性質を正しく把握しておきましょう。
    ここからは、深夜時間帯の労働や月60時間を超える場合など、シーン別に具体的な残業手当の計算方法を紹介します。

    法定外残業に深夜手当が加算される場合

    法定外残業が深夜時間帯(22時~翌5時)に行われた場合は、時間外手当の25%以上に加え、深夜割増の25%以上が上乗せされます。したがって、割増率の合計は50%です。
    この場合の残業手当は、以下の通り算出します。

    • 1時間あたりの基礎賃金 × 1.5(割増率50%) × 法定外残業時間

    たとえば、時給1,600円の従業員が深夜に2時間残業した場合、計算式は「1,600円 × 1.5 × 2時間」となり、支給額は4,800円です。
    通常の残業(割増率25%)よりも高い割増率が適用されるため、深夜労働が絡む残業手当の計算には十分注意しましょう。

    法定外残業が60時間超えの場合

    月60時間を超える法定外残業の割増率は、25%以上から50%以上に引き上げられます。
    この場合の残業手当の計算式は、以下の通りです。

    • 1時間あたりの基礎賃金 × 1.5 × 60時間を超えた残業時間

    たとえば、時給1,600円の従業員が月に70時間の残業をした場合、60時間を超えた「10時間分」の残業手当は「1,600円 × 1.5 × 10時間」で算出し、支給額は24,000円です。
    なお、60時間までの残業については、これまで通り25%以上の割増率で計算します。
    月の残業時間によって適用される割増率が変化する点に注意しましょう。

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    働き方・制度ごとの残業手当の計算方法

    残業手当の計算方法は、導入している勤務体系や制度によって大きく異なります。
    フレックスタイム制や裁量労働制、変形労働時間制などは、一般的な働き方とは「労働時間のカウント方法」や「割増賃金の発生タイミング」が法律上のルールで細かく定められているためです。
    そのため、従業員ごとに適用される制度が異なる場合は計算が複雑になりやすく、誤解から計算ミスを招くおそれがあります。
    各制度における正しい算出ルールを整理して、適正な支給につなげましょう。

    フレックスタイム制の場合

    フレックスタイム制では、一日単位ではなく「清算期間(※)」における総労働時間が「法定労働時間の総枠」を超えたときに、時間外労働に対する残業手当が発生します。
    そのため、1日10時間働いた日があっても、清算期間内の合計時間が総枠内に収まっていれば、原則として時間外労働にはなりません。日々の労働時間の増減は期間内で相殺されるためです。
    たとえば、清算期間1か月のケースで、ある日は10時間働き、別の日は6時間に短縮したとします。この場合、期間合計が総枠以内であれば、10時間労働した日について割増賃金を支払う必要はありません。
    ただし、深夜労働(22時~翌5時)や法定休日労働については、清算期間の超過有無に関わらず、その都度割増手当の支払いが必要です。
    フレックスタイム制を導入する企業では、就業規則に清算期間の長さや総枠の算出ルール、さらに休日・深夜の扱いを明記し、適正に運用しましょう。

    ※清算期間:労働時間の過不足を計算し、残業代の発生を判定するための対象期間のこと。

    裁量労働時間制の場合

    裁量労働時間制は、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ労使間で設定した「みなし労働時間」に基づき賃金を計算する制度です。
    そのため、実働時間がみなし時間を超えたとしても、その超過分に対して追加の残業手当(時間外労働に対する割増賃金)を支払う必要はありません。日々の労働時間の配分を本人の裁量に委ね、算定を一定時間にみなすという特例があるためです。
    ただし、「みなし時間の設定」そのものが法定労働時間(1日8時間)を超える場合は、その超過分が常に時間外労働となり、割増賃金の支払い対象となります。
    たとえば、1日のみなし時間を9時間に設定した場合、実際の労働時間が何時間であっても、法定労働時間を超える「1時間分」の残業手当を毎日支払わなければなりません。
    また、休日労働や深夜労働(22時~翌5時)については、みなし時間の適用外です。これらの時間帯に働いた場合は別途、割増賃金が発生する点に注意しましょう。
    裁量労働時間制を適切に運用するには、みなし時間が法定時間を超える場合の扱いや、休日・深夜の割増分を就業規則・賃金規定に明記し、給与計算ロジックと一致させることが不可欠と言えます。

    変形労働時間制の場合

    変形労働時間制は、繁忙期と閑散期の波に合わせて、日ごとの労働時間を前もって変動させる仕組みです。
    変形労働時間制では、変形期間(例:1か月・1年など)の平均労働時間が「週40時間以内」であれば、特定の日に8時間を超える所定労働時間を設定できます。
    この制度では、あらかじめ設定した「その日の所定労働時間」を超えた分や、変形期間の総枠を超えた分が残業手当の対象となります。
    たとえば、変形期間が1か月のケースで、ある週に45時間働いたとします。このとき、別の週が35時間であれば平均は週40時間以内となるため、期間総枠としての法定外残業は発生しません。
    ただし、「事前に決めたその日の所定労働時間」を超えて働いた実働分については、期間の合計に関わらずその都度残業手当が必要です。
    変形労働時間制を導入する企業では、日ごとの勤務スケジュールを事前に確定させ、超過時の扱いや総枠の算定方法を就業規則に明記しておきましょう。

    ※変形期間:労働時間の増減を平均化するために設定する対象期間のこと。

    固定残業代制の場合

    固定残業代制は、あらかじめ定めた一定時間分の時間外手当を、給与に含めて支払う制度です。
    実際の残業時間が固定分の中に収まっていれば、追加の支給は不要となります。しかし、固定時間を1分でも超えた場合は、その超過分に対して「別途残業手当」を支払わなければなりません。
    たとえば、「月20時間分の固定残業代」を支給している場合、21時間目からは別途計算が必要です。この際の計算単価は、固定残業代を除いた基本給などの賃金から算出した「1時間あたりの基礎賃金」をベースにします。
    固定残業代制を適切に運用するには、給与明細上で「基本給」と「固定残業代」を明確に区分し、超過時間の管理と差額精算を徹底しましょう。

    残業手当の未払いリスク

    法定外残業に対する残業手当を正しく支払わないことは、企業にとって大きな経営リスクとなります。
    意図的な未払いはもちろん、計算ミスによる「不足分」の発生も労働基準法違反に該当し、行政指導や社会的信用の低下を招くためです。
    具体的なリスクとしては、主に以下の3点が挙げられます。

    • 法的リスク:労働基準監督署による是正勧告や、罰則(懲役または罰金)の対象となる
    • 金銭的リスク:従業員から過去5年分(当分の間は3年)の未払い賃金を請求される(※)ほか、遅延損害金や「付加金」の支払いを命じられる可能性がある
    • 信用リスク:SNS等での拡散による企業イメージの悪化が、採用活動や取引先との契約に悪影響を及ぼす

    これらのトラブルは一度発生すると対応に多大なコストを要し、解決まで長期化する傾向があります。
    残業手当を正確に算出・支給することは、単なる事務作業ではなく、企業を守るための「リスク管理」そのものであるといえるでしょう。

    (※)参考:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」

    残業手当の適正計算に勤怠管理システムが有効な理由

    残業手当を正しく支給するためには、労働時間を客観的な記録に基づいて把握しなければなりません。
    これまで解説したような複雑な割増率の判定や、複数月にわたる上限管理を手作業で行うのは、計算ミスや集計漏れが生じやすく、法令違反を招く大きな原因となり得ます。
    そこで有効なのが、打刻データの収集から割増賃金の算出までを自動化できる「勤怠管理システム」の活用です。
    以下では、システム導入によって得られる具体的なメリットを解説します。

    労働時間を正確に把握できる

    勤怠管理システムを導入する主なメリットのひとつは、打刻データを自動記録し、労働時間を客観的に把握できる点です。
    ICカードやスマートフォン打刻を活用すれば、勤務開始・終了時間や休憩時間がシステム上に正確に記録され、不正申告や記入ミスを未然に防げます。
    手書きのタイムカードやExcel管理では難しかった「客観的な労働時間の証明」も容易になり、残業手当の計算精度を高める強固な基盤となるはずです。

    給与計算のミスを防止できる

    勤怠管理システム上で残業時間と割増率を連動させれば、給与計算のヒューマンエラーを大幅に削減できます。
    手作業による勤怠データの集計は、入力漏れや計算間違いなどのミスが起こりやすく、未払い残業や過払いの原因になりがちです。
    一方で勤怠管理システムなら、法定内・法定外・深夜などの区分を自動で判別し、正確な手当を算出します。
    月60時間を超える割増率の変更にも自動対応するため、処理の精度と効率を同時に高めることが可能です。

    法令遵守を徹底できる

    勤怠管理システムは、36協定の範囲を超えない運用を支援し、コンプライアンスの徹底をサポートします。
    労働時間をリアルタイムで集計し、上限に近づいた時点で自動的に警告(アラート)を発する機能を備えているためです。
    管理者は早期に勤務調整を行えるようになり、法令違反のリスクを未然に回避できます。「月45時間を超えそうな従業員」を自動で抽出する機能などは、健全な労働環境を維持するために極めて有効です。

    多様な働き方に対応できる

    勤怠管理システムは、フレックスタイム制やテレワークなど、多様化する働き方にも柔軟に対応可能です。
    従業員ごとに異なる勤務形態を一元管理できるため、在宅勤務者のログイン・ログアウト時間や休憩取得状況もリアルタイムに把握できます。
    働き方改革を推進しつつ、公平で透明性の高い労務管理を実現するための不可欠なツールといえるでしょう。

    「楽楽勤怠」を活用して残業手当を正確に支給しよう

    残業手当を適正に支給するためには、まず「何が残業にあたるのか」という定義を正しく理解し、そのうえで労働時間を正確に把握することが不可欠です。
    法定内・法定外の区別や割増率の合算、さらに働き方ごとに異なる算出ルールを曖昧にしたままでは、計算ミスや未払いトラブルを招くおそれがあります。特に、近年厳格化されている「時間外労働の上限規制」への対応は、企業にとって避けては通れない課題です。
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    石川 弘子
    • 監修石川 弘子
    • フェリタス社会保険労務士法人 代表
      特定社会保険労務士、産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント。
      著書:「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)「モンスター部下」(日本経済新聞出版社)
      https://www.ishikawa-sk.com/

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